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: 蛍光分光光度計(FP-6300)の使い方 : 実験 : 蛍光分光器の光学系

スペクトル測定の実験条件

蛍光の発光スペクトルとは、励起波長は固定して、発光側の回折格子の角度 を変化させ、検出する光の波長を変えた場合の光強度の変化の測定である。 逆に、励起スペクトルは、励起側の回折格子の角度を変化させて、照射する光の 波長を変化させた時の、検出している光強度の変化の測定であり、検出する光の 波長は固定されている。励起・発光スペクトルを測定する際の留意点をまとめて おく。

励起波長または発光波長
発光スペクトルの場合は励起波長、励起スペクトルの場合は発光波長を固定する。 スペクトルの測定画面では、励起側(Ex)と発光側(Em)の波長は必ずどこかに表示 されているので、指定した波長に固定されているか注意する。
波長範囲、スキャン範囲
スキャンする波長の範囲を指定する。発光スペクトルでは、固定した励起波長か ら長波長側の範囲を、励起スペクトルでは、固定した発光波長よりも短波長側の 範囲を指定する。
バンド幅、バンドパス、スリット幅
呼び方は違っても、これらは同じものを指す。 スリット幅を狭くすると、回折格子に入射(または出射)する光の角度が 制限されて、回折条件を満たす光の波長の幅が狭くなるが、強度は減少する。
スキャン速度、走査速度
回折格子の角度を変えて、波長を変える速度。速くスキャンすると 測定時間は短くなるが、他の条件を適切に設定しないと、スペクトルの形状が 変わってしまう場合があるので注意する。
感度、Sensitivity
光電子増倍管(光の検出器)に印加する電圧を変えて、光の検出感度を変える。 感度を上げると、ノイズも増幅される。 感度を変えた場合には、ゼロ点補正をやり直す必要がある。
レスポンス
光の検出信号の変化に対する追随性の時間。レスポンスを遅くすると、 ランダムノイズは平均化されて消えるが、スキャン速度が速いと、 スペクトルの形状が変わってしまう。
シャッター
光を照射し続けると、分解が進む 12 色素の場合には、測定以外の時は、 励起側のシャッターを閉じておいた方がよい。分光器によっては、 スペクトル測定開始時に、自動的に励起側と発光側のシャッターを開いて、 測定を開始するモードもあるが、そうでない場合は、測定開始前に、 両側のシャッターを開いておく。
ゼロ点補正、オートゼロ
光検出器である光電子増倍管の出力は、光が入射していない場合でも、 ゼロにはならない。これを暗電流(dark current)と呼ぶ。発光側の シャッターを閉じた状態での検出器の出力をゼロにセットする操作を ゼロ点補正やオートゼロと呼ぶ。暗電流は、 感度(光電子増倍管に印加する電圧)に依存するため、感度を変えたら、 ゼロ点補正をやり直す。また、時間の経過と共に、徐々に変わる場合 もあるので、発光側シャッターを閉じた状態で、出力がゼロから有意に ずれている場合にも、ゼロ点補正をやり直す。

以上の実験条件の制御パラメータや操作は、どのような分光器を使っても必ず必 要になるものである。以下では、本実験で用いるふたつの分光器の使い方の概略 を述べる。詳しい使用法については、それぞれの分光器の取扱説明書を参照する こと。



... 光を照射し続けると、分解が進む12
これを蛍光退色、 photobleachingと呼ぶ。