上述したように、TCP/IP の世界では、IPアドレスを基に通信が行なわれます。 ところが,私たち人間にとってみると、このような数字の羅列であるIPアドレスは 覚えにくく、操作がしにくいものです。また、計算機の所属や設置場所も分かり ません。例えば,全てのメールアドレスが foo@130.34.xxx.yyyだったり、WWWの URL19が http://130.34.xxx.yyy/index.htmlだったりしたら不便なことでしょう (図5)。
そこで,IPアドレスと別に、コンピュータ等に英数字の名前(ホスト名)をつけ て使っています。ネットワーク上の所属(組識や国)を表す名前(ドメイン名)と結 合させたホスト名は、abc.yyy.xxx. tohoku.ac.jpのような形式になり,この名前 を使って、世界で一つのコンピュータを指し示すことができます。このようなイ ンターネット上の名前サービスを、DNS(Domain Name System)と呼びます。
DNSでは、ネットワークを利用する組織毎にドメイン名と呼ばれる名前がつけら れます。ドメインは階層を成しており、国,組織の属性,組織の名称,... 等 に応じて枝分かれした木構造をしています(図6)。ある組織 のドメイン名は、木構造の上位が右側に来るように、各階層をピリオド「.」で 区切って表記します。例えば,日本(jp)の学術組織(ac)である東北大学(tohoku) のドメイン名は,tohoku.ac.jp で表わされます。
ドメインの根元(root)には、トップレベルドメイン(TLD、Top Lebel Domain) があります。TLD には、ISO(国際標準化機構)が定めた 2文字による国別コー ド(country code)を使う国別コードTLD(ccTLD)と、国別コードを使わない汎 用TLD(gTLD、generic TLD)があります20。 日本の .jp ドメイン以下のドメイン構造は、図6 では、組織の 種別を表す2文字のドメイン(大学関係の ac や会社を表す co など)の下に、 各組織のドメインが示されていますが、2001年からは、jp の直下に、もっと自 由な名前で誰でも取得できる「汎用 JP ドメイン」も運用されるようになってい ます21。
DNSを使って、あるドメイン名からそれに対応するIPアドレスを引き出すことを 「名前解決」と呼びます22。では、 実際に、計算機が名前解決する仕組みはどの様になっているのでしょうか? 例 えば、WWW ブラウザで、http://www.example.co.jp/ という URL を入力した場 合の名前解決の手順を図7に示します23。まず、計算機は その OSに設定されているネームサーバーに、名前解決の依頼をします。stex で は gw.stex.phys.tohoku.ac.jp (=192.168.65.254) がネームサーバーの仕事をし ています。一般にネームサーバーは、自分のドメインの名前の情報は知っていま すが、それ以外のドメイン情報については、最上位のルートドメインのネー ムサーバー24から順番に上位のドメインのネームサーバーに問い合わせ をして、最終的に、example.co.jpドメインのネームサーバーから、IPアドレス を引き出します。このように、DNSの名前解決は、世界中に分散されたネームサー バーが協調しあって実現しているシステムなのです。